2008年11月15日土曜日

段取り力

さて、遅くなりましたが昨日の1冊をご紹介します。まとめ買いした斉藤孝さんの本です。



「段取り」というと、結婚披露宴の進行などで事前に綿密な打ち合わせを行うといったことが思い浮かんでしまいますが、著者は「段取り」をもっと根本的・本質的なところから捉え、良い「段取り」ができるようにするために重要なことを述べています。

具体的には、①例えマニュアルに従うだけの仕事でも、常に段取りを意識する、つまりどうしてそういう手順になっているのか、改善すべき点は無いかを考えること、②「ビジョン」を常に念頭に置くこと、③「素材」や「制約条件」を意識することが大切であるということです。

①については、トヨタの「カイゼン」の具体例や高級ホテルの従業員などの具体例が挙げられています。トヨタの「カイゼン」については、それこそ多くの書籍やビジネススクール等で扱われており、私もかなり勉強したつもりですが、改めて関心させられました。また、高級ホテルの例では、トイレ掃除で「素手で便器を触って汚れが残っていないか確かめる」というような例が出ており、本書での「段取り」が単なる「手続き」を準備するということよりも遥かに大きなものであることを思い知らされます。

②、③は対比的なことで、著者の他の書籍にある「本質的なことと具体的なことを行き来する」というような考え方に通じるところがあります。例えば何の計画もなしに旅に出て、宿泊先を探して彷徨うことも「段取り」であり、そこにはどんな状況に陥っても動じないという「ビジョン」がある、という記述には「なるほど」と唸らされました。私もどちらかというと細かい準備は苦手で、問題が起きたらその都度対応するというタイプですが、それで何とかなっているということも「段取り力」があると捉えられるのかなと、勝手に(?)納得してしまいました。

③は、特に新たなアイデアを生み出す時の話で、「制約」や「条件」をきっかけにすると「段取り」を立てやすいと著者は述べています。やはり著者の他の書籍に見られるように、ジェームス・ヤング著の「アイデアのつくり方」に通じるところがあります。例として電車のダイヤ編成の生々しい実態が記述されており、狭義の「段取り」とは次元の異なる議論が展開されています。

斉藤氏の著書で面白いのは、やはり詳細な具体例が数多く取り上げられているという点に尽きますね。本人によると、これも「段取り」における「素材」や「条件」になり「自分が頭を抱えて書く部分が少なくなるので良い」と著者は述べていますが、的確な例を使うことで主張が見事に強調されているところは、さすがとしか言いようがないですね。

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